白生地のいろは

はじめに

「きもの」というフォルムを固定したことで、日本の染織は意匠のバリエーションを増やし、生地へのこだわりを深めることで、美意識と技術を磨いてきました。

「きもの」は、絣や紬のように生地を織る前に糸の状態で染めてしまう<先染(さきぞめ)>と呼ばれるものと
友禅染や型染に代表される、生地に織りあがってから染める<後染(あとぞめ)>に大別されます。

白生地は<後染>のきものの、染下生地として用いられる白地のままの織物のことです。

<後染>の加賀友禅染、写真提供/金沢市

白生地の代表格、縮緬

絹の白生地を代表するのは『縮緬』です。
緯糸に強い撚りをかけた糸を経糸に織り込んでいきます。右撚り、左撚りと交互に織り込み、一旦生地の状態にしてから精練(せいれん)と呼ばれる工程で不要な糊(セリシン)を洗い流すと撚りが戻ろうとする力が発生して、右撚りの糸は左へ、左撚りの糸は右に分かれて、布の表面にシボが表れます。このシボの立ち方や用途により名称がつけられます。
一越・三越・古代縮緬などの無地縮緬、紋意匠縮緬・紋綸子縮緬などの紋縮緬と職人の知恵と工夫でさまざまな種類の白生地が生み出されています。

白生地の代表産地、長浜

生糸から白生地になるまでには、経糸・緯糸づくり、製織、精練と多くの工程があり、熟練の職人が携わっています。長浜には、湿潤な気候、豊富な琵琶湖の軟水と白生地づくりに適した環境と共に、永年の職人の知恵が息づいています。ご一緒に白生地づくりの現場を見学してみましょう。